終身雇用は消滅した
これは断言していいです。日本の企業において「終身雇用」は消滅します。いまから20年後、日本企業の7~8割は終身雇用ではなくなっているでしょう。
このさき終身雇用が消滅する理由が2つあります。
消滅理由1 経済環境が変わった
終身雇用は「ジャパン アズ ナンバーワン」と讃えられた昭和の時代に、年功序列賃金とセットにして用いられた「日本企業特有の雇用形態」です。
日本の経済は、朝鮮特需(1950年)からバブル崩壊(1991年)まで、41年間にわたり拡大が続きました。当時は「仕事余り、人手不足社会」が常態化していました。これがそもそもの始まりです。
それゆえ、企業は「従業員を長期的に確保するため」に、「終身雇用と年功序列賃金」をセットにして採用したのです。
つまり、終身雇用は「経済が長期にわたって拡大する環境」でなければ成立しないシステムなのです。
しかし、時代は変わってしまいました。
平成から令和まで「失われた30年」と呼ばれる日本経済の長期的な衰退が続いています。(この衰退はまだ終わっていません。いつまで続くかもわかりません)
よって「人余り、仕事不足社会」が常態化したのが「いまの日本」です。
こうした真逆の経済環境で、終身雇用が維持できるはずがありません。
消滅理由2 国際競争に勝てなくなった
1980年代に「世界の時価総額ランキング」で上位を占めていた日本企業は凋落し、今や世界トップ50に入る日本の企業はトヨタ1社だけです。 上位は、言うまでもなくGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)に代表されるアメリカ企業ばかりです。
また、『世界競争力年鑑』によれば、2020年における日本の国際競争力は34位です。1989年からの4年間は世界1位を維持していたものの、97年以降は20位台を推移し、2019年には30位となっています。
この20~30年の間に日本および日本企業の国際競争力が下がった原因の一つとして指摘されているのが、日本型雇用(終身雇用+年功序列賃金+新卒一括採用)の弊害です。
一つの会社で長く働き続けることで、自社で有効なスキルのみを習得すればよいため、グローバル化に対応できる人材が育ちにくくなります。 一方、より高い専門性を求められるジョブ型雇用なら、優れたスキルや経験を持つ人材が集まりやすくなることから、国際競争力が高められるでしょう。
超優良企業でも終身雇用は維持できない
もはや、トヨタやサントリーといった超優良企業さえ終身雇用はありません。すでに、経営トップが「終身雇用は維持できない」と公言しています。
2021年9月の経済同友会のセミナーで、サントリーの新浪社長が「45歳定年制にして、個人が会社に頼らない仕組みが必要だ」と発言して大炎上!
2019年10月の日本自動車工業会の会見で、トヨタ自動車の豊田社長が「なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と発言して物議をかもす。
令和4年現在で終身雇用が期待できる組織は、公務員とインフラ企業(鉄道、電気、ガス)くらいではないしょうか。
若者が関心をもたない「終身雇用の消滅」
「終身雇用の消滅」が話題になっても、若者にはほとんど関心がありません。なぜなら、これがヤングの問題ではなく、ミドルからシニアの問題だからです。
35歳くらいまでなら、たとえ会社をクビになったとしても、たくさんの仕事があり、転職先に不自由しません。また、企業のジョブ型採用も始まり、転職に対してネガティブなイメージはありあません。
だから、若い人にとって切実な問題ではありません。
しかし、トラブルは10数年後に発生します。あなたが40歳以降になり、会社の倒産や業績不振によるリストラなどに遭遇したときです。
年齢的に妻子がいるでしょう。住宅ローンや教育費の支払いがあり、若く独身の頃とは必要な生活費の桁が違います。
そのうえ「転職35歳限界説」はいまでも厳然たる事実で、40歳以降で会社をクビになれば、おいそれと仕事も見つかりません。
そのときどうなるでしょう? 想像力を働かせてください。
そうした場合でも困らないように、若いころからキャリアを磨き、リストラされないようにしておかねばなりません。また、たとえリストラされても他社ですぐ雇われるように、仕事の実力をつけておかねばなりません。
因みに、アメリカでは平均で生涯8回ほど転職するそうです。
日本から終身雇用がなくなるということは、アメリカ人と同様に、複数回の転職をするキャリアを歩むことになるのです。
わかりやすい例が、日本プロ野球(NPB)とアメリカメジャーリーグ(MLB)のにおけるキャリアの違いです。
日本のプロ野球(NPB)であれば、新卒で入った球団と、その後トレードで1~2球団に在籍するくらいが一般的でしょう。
ところが、アメリカメジャーリーグ(MLB)は違います。選手の移籍回数は、日本の4倍くらいになります。1人の選手が平均8球団に在籍し、ほぼ2~3年毎に球団を渡り歩くイメージです。
日本のサラリーマンが、生涯で5~6回は転職することが普通になる日がやってくるのです。
終身雇用の消滅で若者が大損する
もともと「終身雇用と年功序列賃金」がセットで運用された日本型雇用(メンバーシップ型雇用)は、若者にとって大変不利な制度なのです。ポイントは年功序列賃金です。
年功序列賃金ですから、給与は仕事の成果とか実力ではなく、会社に何年在籍したかによって決まります。
ある若手がどれだけ優秀でも、まだ会社の在籍期間が短いので給料は安い。逆に50代のおじさん社員は無能でも、在籍期間が長いので給料が高い。「働かないおじさん」問題もこれが原因です。
ただし、年功序列賃金でも、終身雇用とセットなら問題はありません。定年まで勤め上げれば、若いとき給料が安い分と50代で高い分が平均され、全体としてトントンになり損失はありません。
しかし、あなたが40歳になったとき、突然に終身雇用制度がなくなったらどうでしょうか? 終身雇用の会社に入って、20年後に放りだされたら最悪です。そのときは大損です。
何度も言いますが、終身雇用は「長期的に社員を確保するための制度」です。生涯賃金の「長期後取り制度」です。定年まで勤めてナンボ、それでトントンになる制度なのです。
安い給料で20年も働かされた上に、給料が高い残りの20年がない。
おまけに40代で解雇・リストラされたら転職も簡単にできない。
あなたの人生はオワコンです。
だから、終身雇用の会社は定年まで勤めてナンボ、途中で制度が変わったら「若者が大きく損をする」ということを憶えておいてください。
終身雇用と年功序列賃金は、途中で
制度が変わり、会社を辞めるときは
若者が大損害をうける制度だ!
終身雇用がなくなるとどうなる?
終身雇用であれば、人生後半のキャリアを考える必要さえありませんでした。なぜなら、自分から会社を辞めない限り、定年までの雇用が保証されていたのです。
終身雇用がなくなるということは、いままで会社が提供・確保してくれた「人生後半における仕事の保証がなくなる」ということです。
いまの若者たちは、人生100年時代を迎え、長期間働き続けなければならなくなったうえに、父母の世代のように「人生後半の仕事」が約束されなくなるのです。
では、どうすればよいのか?
終身雇用がなくなったということは、人生後半のキャリアを会社に期待することはできません。若いうちから、人生後半のキャリアを意識し、自分のキャリアを「自分でデザイン」していく必要が生じたのです。
人生後半のキャリアを企業に
依存することはできなくなった
生涯を通じた自分のキャリアを
自らデザインする
キャリアプランニングが必要!