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初めての【自分探し】 あのとき「経理の仕事」を選んで本当に良かった!

経理の仕事にたどり着くまで


まずは、私が経理の仕事を選んだ”いきさつ”から始めたいと思います。

私はもともと文系人間なのですが、なぜか中堅私大(MARCH)の理工学部に進学してしまいました。もともと読書好きの文系人間が、なぜ理科系に? 理由は3つありました。

【理由1】 英語の成績が突出して悪かった
すべての教科の中で、英語の成績が突出して悪かったので、英語力を問われる文系の学部・学科は厳しい。英語の配点が低い私立理系を狙うしかなかったのです。

【理由2】 仲良しグループが理系クラスに進んだ
高校時代に仲の良かった友達が、軒並み理系クラスに進んでしまいました。また、私が通っていた高校は、文系クラスにはバカが進み(全員ではない)、頭のいいヤツは理系クラスに進むイメージがありました。

【理由3】 学部・学科を重視していなかった
実家が自営業だったこともあり、サラリーマンになるつもりがありませんでした。だから、大学の学部・学科なんてどうでもよかったのです。おまけに、当時はバブル経済の8年ほど前で、就職なんて腐るほどあり、大学は遊びに行くところ「UNIVERSITY」の意味は「総合レジャーランド」くらいに思っていました。

こうした理由で学部・学科を選んだため、専攻科目の勉強が面白いはずがありません。しかし、折角4年間も時間とお金をかけて知識を学んだのがちょっと惜しい。だから、ダメもともとのつもりで、建設コンサルタントに就職しました。

ところが、いざ働きだすとやっぱり面白くない。しかし「石の上にも3年」と言うじゃないですか。「3年だけ頑張ってみよう」と働き続けました。

しかし、3年たっても「やはり面白くない」。仕方なく会社を辞めることにしました。

つぎの仕事は何にしようか? いわゆる「自分探し」の始まりです。

天職がわからないなら、適職を探そう

九州の実家に戻り、2年間はアルバイトをしながら気楽な暮らしをしていましたが、そうしているうち27歳になっていました。

さすがにマズイ。「本格的に将来を考えないといけない」「何か手に職をつけなければならない」。

そこで、バイト辞めて部屋にこもり「一生の仕事を何にするか」真剣に考え始めました。

まず考えたのが「自分の天職は何か?」ということです。さまざまな天職本を読みながら、2~3か月部屋にこもり考えましたが、どれだけ考えてもわかりません。このとき考えすぎて、生まれて初めて「胃潰瘍」なりました。

そうして、たどり着い結論は以下のようなものです。

天職なんて、あるヤツには生まれつきあるし、ないヤツにはない」

いまないヤツは、いつか天職に出会うときまでない

一生を費やしても、天職との出会いがあるかはわからない


私は2番目の「まだ天職に出会っていないタイプ」です。

それならば「まだ出会っていない」「出会えるかどうかわからない天職」について、いつまで考えても仕方がない。「天職はわからないけども、適職なら自分にもあるだろう」と「適職探し」に切り替えました。

私の適職は何だろう? 「どんな仕事が好きなのか、向いているのか」など「適職に該当する条件」を考えてみました。

【適職条件1】 文科系の仕事であること
もともと読書好きな文系人間なので、これは当然でした。

【適職条件2】 営業は絶対にイヤだ
正確なデータは知りませんが、文系大卒の半分くらいは営業職に就いているような気がしていました。でも、営業にはなりたくなかった。毎日お客にペコペコ頭を下げるなんてとんでもない。絶対にイヤだ。理系出身なので、たとえ文系の仕事でも技術的な仕事に就きたい

【適職条件3】 一生食いっぱぐれしないこと
とにかく、将来にわたって「食いっぱぐれ」したくなかった。そのためには、流行り廃りがなく、大企業から零細企業まで、すべての会社で必要な仕事がいい


この条件で考えた結果「企業の経理マンになろう!」と決めました。

「理系だから数字に強い」「文系の仕事で技術職だ」「すべての会社に経理部門があり、喰いっぱぐれしない」というわけです。

では、どうしたら企業の経理マンになれるのだろう? 経理マンとして採用されるためには、経理の仕組みがわからなければなりません。

しかし、私は理系で簿記のボの字も知りません。借方・貸方や勘定科目、それって何のこっちゃ? これでは話になりません。

そこで、経理の実務を習得するには、会計事務所で働くのが手っ取り早いだろう考えました。善は急げ、さっそく簿記のテキストを買ってきて、独学で日商簿記2級を取得。そのうえで、3年間限定(実務を習得するまで)と決めて、近所の会計事務所に入ることにしました。

ところが、その事務所は地元で有名な「ブラック会計事務所」だったのです。

ブラック会計事務所だった


そこは、地元では比較的大きな会計事務所で職員は30名くらい。20代の若手が多く楽しい職場でしたが、とにかく「ブラック」でした。

給料は、現在に換算すると月16万円ポッキリ(最低賃金レベル)。残業手当なし、休日手当なし、ボーナスなし。おまけに社会保険もない。通勤の交通費さえ出ないという恐ろしい職場でした。

ときおり、研修で他の会計事務所の職員さんと話をすると「君、○○事務所なの?」「あんなところにいたらブッ殺されるぞ!」などと脅されていました。

しかし、いま考えてみると、会計事務所なんて所詮は「個人経営の零細企業」です。一般企業と比べたら給与も福利厚生も勝負になりません。どこに入っても似たり寄ったりだったと思います。

勤務の状態はどうかというと、普段の月はそれほど残業になりません。しかし、毎年3月の確定申告時期になると「地獄」が待っています。

だいたい、12月の年末調整から少しづつ忙しくなり、2月15日の確定申告開始以降、本格的なブラックモードに突入します。段階的に残業時間が増えていき、3月1日から15日までの2週間がピークです。

3月の始めはだいたい24時くらいまで残業。そこから25時、26時と少しづつ残業時間が増えていきます。最後の1週間は午前3:00くらいまで残業し、最終日の3月14日は徹夜。これが毎年のパターンでした。

もちろん日曜も出勤、女性職員たちも青白い顔色で薬を飲みながら、毎日24時くらいまでは残業していました。

ところが、これだけ働いて残業手当ゼロです。確定申告手当もなし。本当に1円も出ません。完全な違法労働、労働基準法違反です。

まぁ、ここまで会計事務所の愚痴を散々書きましたが、その後の経理マンとしての長い人生を考えると、ファーストキャリアとして会計事所を選んだのは正解だったと思っています。

会計事務所に入ってよかった点
  • 「法人の決算業務」から「個人事業の申告」まで簿記会計の全体像を把握することができた
  • 「製造業の原価計算」や「建設業の工事完成基準」など、さまざまな業種の会計スタイルを見ることができた
  • 日記帳や伝票会計、会計ソフト利用など、さまざまな会計手法を見ることができた

最初の転職、トヨタの販売店へ


当初の計画通り、3年間ジャストで会計事務所を退職。つぎは「トヨタの販売店」に経理職員として転職。初めて企業の経理マンの職を得ました。「ネッツトヨタ〇〇株式会社」といった名前の会社です。

会計事務所に入ったときは、27歳で年収200万円ポッキリ。今回は30歳で年収400万円。3年間で倍になりました。やっほー!

おまけに、その会社は超「ホワイト企業」でした。会社の借金はゼロ。社長は素晴らしい人物だし、社内の人間関係も抜群にいい。残業手当や休日手当も出るし、ボーナスは年間6か月もありました。(いまと違って、当時はボーナス6か月は普通です)

さらに、5年間勤務する間に平社員から、主任、係長と昇進させてくれました。とにかく、言うことなしの会社でした。そのまま勤め続けて何の問題もなかったのですが……。

トヨタの販売店の場合、勘定科目が約300あり、全国の販売店で統一された会計マニュアルが整備されています。入社当初こそ膨大な知識の習得が必要ですが、2年くらいでそれらを習得すると、あとは同じことを繰り返しです。企業の経理って、毎年まったく同じことをするのです。

それゆえ、5年くらい経つと、社内のことは「何から何までわかる」ようになります。つまり、仕事上でわからないことがなくなってしまうのです。

○○営業所で社用車を廃車するときは、勘定科目はこれで仕訳がこうなる。または、××支店で社屋のリフォームするときは、勘定科目はこれで仕訳はこうなる。借方5科目、貸方7科目といった複合仕訳がパッと浮かぶようになります。

あとは伝票を切って、証憑書類(請求書、明細書)を添付し、上司の押印をもらうだけです。そのとき入社5年で経理の係長でしたが、決算書や法人税の申告書など、経理関係の書類は全て任されるようになっていました。

しかし、まだ35歳。定年まで残り25年あります。このまま「わかり尽くした仕事」を定年まで繰り返すかと思うと……。

そこで、もう一度だけ転職して新しい仕事にチャレンジしてみようと考えました。

2回目の転職、銀行のリース会社へ


2回目の転職は35歳のとき、当時は転職エージェントや転職サイトなんてありません。ハローワークや求人誌には低収入の仕事しかないため、人材銀行と新聞の求人欄を頼りに転職先を探しました。

人材銀行で求人ファイルを眺めていると、地場銀行のリース会社の求人があります。窓口で尋ねると「こんないい求人は中々ないですよ」と言われたので、すぐに面接の手続きをお願いしました。入社試験はなく、面接だけで内定をもらい、経理課長として働きだすことになりました。

会社の業務は、ファイナンスリースとメインテナンスリース、および貸金でした。転職したのがちょうどバブル崩壊の時期にあたり、銀行の子会社といってもノンバンクなので、かなりの不良債権があるだろうと覚悟して入社しました。

ところが、本業のリース取引でキチンと利益が出ており、それを原資に強力に不良債権処理(債権放棄)を進めている最中といった経営状態でした。

売上高は300憶、総資産で1000憶くらいあるリース会社です。転職したばかりで、肝心のリース会計の理論や電算システム(コンプピューターの処理内容)が全くわからないので、1年間はとにかく無難にと、前任者がやった通りに処理していきました。

10億の経理ミスが判明(俺は半沢直樹か!)


一年程経つと、だんだんと「リース会計の理論」がわかってきました。

リース資産は会計上の償却期間と税法上の償却期間が異なります。そうした資産個別の償却差異をコンピューターに計算させ、差異合算額を法人税申告書上で足したり引いたりして、法人税額を算定します。

業務が暇な時期に、過去(5年間くらい)の法人税申告書を眺めていました。

すると「あれっ、何かおかしいな。引かなきゃ(減算)いけないものを足してる(加算)。これ逆なんじゃないかなー」と感じたのがトラブルの始まりでした。

経理部長と一緒に経理担当役員の部屋に行き、本人に直接尋ねてみました。

私:「ちょっと教えていただいて、よろしいでしょうか」(恐縮しながら)

経理担当役員:「何だね」

私:「法人税の申告書なんですが、この部分は逆ではないですか?」

経理担当役員:(フフッと鼻で笑いながら)「10年早い」と言って、右手でシッシッと退室を促します。

私:「失礼しました」と言って経理部長と共に退室。


しかし、どうにも納得がいきません。そこで架空のリース契約を10件ばかり作り、リース資産の償却をパソコンでシミュレーションしてみました。

すると、やはり逆が正解です。この差額を数年分合計すると、課税所得で10憶、税額なら約5億あります。半信半疑でしたが、監査法人の公認会計士に同じ質問をぶつけてみました。

私:「先生、どうもいつもお世話になっております」「つかぬことをお聞きしますが、もし私が間違えていたら、アハハッと笑い飛ばしてください」と前置きして、法人税の加算減算に処理についてお尋ねしました。

(私としては、当然笑い飛ばされるものと思っていました)

公認会計士:「フーッ」と大きく息を吐いたまま沈黙……。

(しばらく沈黙が続いたあと)

公認会計士:(小さな声で)「やっとわかる人が来た」

私:「エーッ!」(驚愕)

(電話機を持ったまま、素早く机の下に潜り込みます)

私:(左手で受話器と口を覆いながら)「先生、10憶ですよ10憶、一体どうするんですか?」と尋ねました。

公認会計士:(今度は元気に)「あなたは何も心配しないでいい。今日中に社長に内容を話しなさい。私が次回行ったときにキチンとするから」と言っわれて、電話は終わりました。


そうです。私が転職したリース会社には、社内で誰一人知らない「経理上の10憶円爆弾」があったのです。

何とかして、過払いした法人税5億を国税から取り戻さなければなりません。「俺は”半沢直樹”じゃないんだ。勘弁してくれーっ!」(泣き)

この件の解決には、その後数年かかり大変に苦労しましたが、国税局の調査もクリアし、何とか無事に過払いの税金(約5億)を回収することができました。

後になって、この件をようく考えてみました。

たとえ地方銀行であっても、銀行員は総じて優秀です。子会社の経理ができる人材なんて山ほどいます。わざわざ外部から人を入れる必要はないし、前例もありません。それなのに外部から私を入れたということは、それなりの理由があったということです。

この件を解決したおかげで、銀行員ばかりの社内で、私のポジションは見事に確立され、その後は順調に勤務することができました。

経理職を選んで本当に良かった


男女問わず、これから経理職を志す人に言いたいことがあります。

無職だった27歳のとき「何を一生の仕事にしようか」と真剣に悩み、その結果「企業の経理マン」を選んだことは「正しかった」「間違えていなかった」と言うことです。

なぜなら、職業選択時の「文系の仕事」「営業ではなく、技術的な仕事」「一生食いっぱぐれしない」という3つのポイントをクリアできたこと、特に3つ目の「一生食いっぱぐれしない」が大きかった。

3つの職場で働きましたが、長期にわたり安定した仕事を得ることができました。しかも、地方では比較的に高給な仕事で、娘を大学院まで進学させることもできました。

もうすぐ定年ですが、今後も働く意欲さえあるなら「会計事務所の人手不足」や「経理専門の転職エージェントの存在」もあり、60歳以降のシニアでもまだまだ仕事はあります。

経理の仕事は、さまざまな法律で義務付けられ、守られているいって過言ではありません。よって、今後もすべての会社で必要です「食いっぱぐれ」することはありません。

しかも、うまくキャリアアップすれば高収入な仕事に就くことも、十分に可能です。

地味ですが、技術的に奥が深く、仕事の醍醐味も十分。ぜひ、夢を持って挑戦してみてください。

経理の仕事は、
生涯を通じてニーズがある「食いっぱ

ぐれしない」仕事です。

うまくキャリアアップすれば、高収入な

仕事に就くことも十分に可能です。