甥っ子がコロナでリストラされた
私の「甥っ子」が、コロナによる業績不振でリストラされてしまいました。甥っ子は突然に無職になったので、お正月に帰省してきました。そこで、「どうしてリストラされたの?」と、その経緯から聞いてみることにしました。
リストラの経緯
甥っ子は国立大卒の27歳で「F君」といいます。新卒で教材出版関係の会社に入り、そこで営業職を5年やっていました。
しかし、新型コロナの影響で訪問販売が難しくなり、会社全体がジワジワと業績不振に陥ったようです。
すると、2021年の4月頃からポツポツと単発の指名解雇が始まります。秋口からは、さらに業績が悪化したため、会社は抜本的なリストラ策を打ち出しました。
営業拠点を業績のよい東京、大阪、名古屋などの大都市圏に集中させるのです。そのため、他の拠点を一斉に閉鎖、そこに在籍する社員をすべて解雇しました。
F君にしてみれば、新卒で入った会社であり愛着もあったでしょうが、どうしようもありません。27歳にして、初めて「無職」になってしまいました。
大層落ち込んでいるかと思いきや、本人は意外と元気。すでに「リクルートエージェント」や「duda」などの転職エージェントに登録を済ませ、年初から転職活動に本腰を入れるとのことでした。
おーっ、久しぶりだな。お母さんから聞いたぞ。クビになったんだって?
そうなんだ。ヒドイ会社だよ。支店も閉鎖され、みんなクビになっちゃった……(泣)
まぁ、人生いろいろ。捨てる神あれば拾う神ありさ。今回の件は、トータルで考えたら「ラッキーな出来事だった」んじゃないかと思うよ。
エエーッ、ラッキーって何が? それってどういう意味?
こんなF君に対して、塾長コンドーは「4つのアドバイス」を贈りました。
Advice1. ベストタイミングでリストラされた
塾長コンドーが、今回のリストラ話を聞いて、真っ先に思ったのがコレ。「ラッキー! 最高のタイミングでクビにしてくれた」ということです。
一般的に「もっとも就職しやすい(求職側の立場が強い)」のは大学卒業(新卒)のときでしょう。次に「 就職しやすい(求職側の立場が強い)」のは社会人になって4~5年目の頃です。F君はまさにこの時期にいます。
なぜ、社会人になって4~5年目が、就職しやすい時期になるのでしょうか。
企業が社会人4~5年目を
積極的に採用したがる理由4つ
- 新人教育が不要。以前の会社が教育してくれている
- すでに経験が5年あり「一人前の営業マン」
- まだ若いから、上司も使いやすく、組織順応性も高い
- 20代だから安い給料ですむ
クリスマスの「ケーキ」だったり、お正月の「お餅や数の子」など、食物には各々「旬」というものがあります。
「旬」とは「その食材を食べたら最もおいしい時期」とか「物事を行うのに、最も適した時期」という意味です。
「就職活動をしている社会人」という商品において、社会人4~5年目がまさに「旬」なのです。
転職エージェントのキャリアアドバイザーから、全く同じことを言われたよ!
Advice2. 終身雇用は消滅した
残念ながら、日本の企業において終身雇用は消滅しました。むろん、外資系企業にはもともとありません。
終身雇用とは「ジャパン アズ ナンバーワン」と讃えられた昭和の時代に、年功序列賃金とセットにして用いられた「日本型の雇用形態」です。
しかし、この制度は「長期にわたって経済が拡大する環境」でなければ成立しません。
朝鮮特需(1950年)からバブル崩壊(1991年)まで、41年間にわたり経済の拡大が続いたため「仕事余り、人手不足社会」が常態化してしまった。これがそもそもの始まりです。
それゆえ、企業は「従業員を長期的に確保する」ために「終身雇用と年功序列賃金をセット」にして採用したのです。
しかし、時代は変わりました。
平成から令和までは「失われた30年」と呼ばれる経済の長期的な衰退が続いています。それにより「人余り、仕事不足社会」が常態化したのが「現在の日本」です。
真逆の経済環境で、終身雇用なんて維持できるはずがありません。
もはや、トヨタやサントリーといった超優良企業さえ終身雇用はありません。すでに、経営トップが「終身雇用は維持できない」と公言しています。
2021年9月の経済同友会のセミナーで、サントリーの新浪社長が「45歳定年制にして、個人が会社に頼らない仕組みが必要だ」と発言して大炎上!
2019年10月の日本自動車工業会の会見で、トヨタ自動車の豊田社長が「なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と発言して物議をかもす。
令和4年現在で終身雇用が期待できる組織は、公務員とインフラ企業(鉄道、電気、ガス)くらいではないしょうか。
Advice3. このさきも安定した社会状況なんて来ない
社会状況の安定という観点に立てば、この四半世紀だけでも、東日本大震災や新型コロナなど、まったく予想していなかった「巨大な阻害要因」が発生しています。
世界を見回せば、今回のウクライナ戦争、同時多発テロからアフガン戦争、第2次イラク戦争、超大国中国の勃興など目まぐるしい変化が続いています。
ゆえに、このさきも「朝鮮半島や台湾における有事」や「富士山噴火や南海トラフ地震」といったような、さまざまな巨大疎外要因が発生すると考えるのが妥当でしょう。
つまり「このさきも安定した社会状況が続くことはない」ということです。
エーッ! このさきも「東日本大震災」や「新型コロナ」のようなことが起きるっていうの! またクビになるじゃないか。もう勘弁してくれー。
ここで、1868年の明治維新以降、日本の近代史を簡単に振り返ってみましょう。
明治は「士農工商で区分された武士の国」から「四民平等の中央集権国家」へと、ドラスチックに変貌した時代です。しかも、その変貌の間に、西南戦争から日清戦争、日露戦争と戦乱に明け暮れました。
元号が大正になり「やっと平和になった」と思ったら、1923年の関東大震災で首都壊滅。
その6年後、今度は海の向こうアメリカで大恐慌(株価の大暴落)が発生します。たちまち、日本もひどい経済不況(昭和恐慌)に陥りました。
陸軍の一部は、この不景気を打開するために大陸侵略を謀り、満州事変をやらかします。それが拡大して支那事変となり、最後は超大国アメリカを相手にした戦争へ突入していくのです。
その結果はどうだったでしょう。1945年の終戦までに、軍人・民間人310万人以上が犠牲となり、国中が焦土と化しました。
何が言いたいかというと、明治維新から太平洋戦争終結までの77年間で「安定した社会状況などなかった」ということです。
ただし、1950年の朝鮮特需から1991年のバブル崩壊までは例外です。日本経済は右肩上がりの成長を続け、この41年間だけは社会状況が安定していたといえるでしょうね。
その後、バブル崩壊から2022年までの31年間は「失われた30年」といわれる経済の長期衰退が続きます。(この衰退はまだ終わっていません。いつまで続くかもわかりません)
さらに、こうした経済不況の中で、阪神大震災、東日本大震災、コロナパンデミックといった「巨大な阻害要因」に襲われ続けたのです。
結局、明治維新以降の154年間で「社会的安定が得られたのは41年間」しかなかった。
41 ÷ 154 = 26.6%
残りの期間113年(73.4%)は「不安定な社会状況」だったことになります。
すべての日本人が「このさきも不安定な社会状況」で生きていかなきゃならないんだ。わかったかい。
叔父ちゃん、わかったよ! 「フンドシを締めなおせ!」ってことだね。
このさきも安定した社会状況が
続くことはなく、終身雇用もない
Advice4. 選択肢を早期に絞るな、全ての可能性を検討せよ
F君は「社会人になってから営業しか経験していないから、営業職で転職するしかない」と言います。そこで「もう一度、可能性のあるすべての選択肢をテーブルに挙げてほしい」と伝えました。
というのも、公務員、税理士・司法書士などの専門職、起業家、企業の営業マン、コック、カメラマンなどなど、職業なんて無数にあります。
まだ27歳だから、いまなら何にでもなれる。職業という名称のあらゆるカードを、その手に握っているのです。それをもう一度、テーブルの上に並べて眺めてみよう。
そうして、全ての可能性を検討し尽くした後に「コレだ!」と決めてほしい。なぜなら、これは「F君の生涯を決定する選択」なのだから。
今回の選択は、
「単なる失業からの脱出」ではない。
「F君の生涯を決定する」選択だ
叔父ちゃん、本当にいろいろありがとう。頑張ってみるよ!
つぎ帰ってきたときに「旨い酒」を飲めるといいなぁ。吉報を待ってるぜ。