令和日本の経理職

【ブラック企業】 そもそも、どんな会社をそう呼ぶのか? 

月200時間残業の「社畜」動画


ここ最近、晩酌のお供で”YouTube”を見ています。見ている動画は「ブラック企業」「社畜」「過労死」といったキーワードで検索した類のものです。そこで「月200時間残業の社畜デザイナー」というVlog(ビデオログ)を見つけました。

なんでも「社員数15人くらいの零細企業で、月の残業は200時間」といった労働環境のようです。月200時間の残業なら、日曜日以外の週6日働いても、1日7.7時間の残業になります。毎日朝8時から終電までの勤務。おめでとう、立派な過労死ラインです!

そのうえ、普段の貧乏生活ぶり(食事内容・衣服・家具類)を見る限り、残業手当もあまり支払われていないようです。

私は「社畜デザイナー」さんに聞きたい。そこまで働かされて、なぜ辞めないの? もしかして「馬鹿なの?」、それとも神経が「麻痺してるの?」。動画なんて投稿してないで、とっとと辞めればいいのに。もしかして「マゾなの?

そもそもブラック企業とは?


ネットを見ると「残業がつらい」といった書き込みが溢れています。

私の経験から言うと、残業がほとんどなく、たまに残業があってもキチンと残業手当がつく。公務員またはインフラ系企業(電気、ガス、鉄道)でもないかぎり、そういう民間企業は、まずないんじゃないかな。

まずは、ブラック企業の定義をおさらいしてみましょう。

ブラック企業の定義


ブラック企業とは、極端な長時間労働、過剰なノルマ、残業代・給与等の不払い、ハラスメントの横行などで離職率が高く、若者の「使い捨て」が疑われる企業の総称です。

労働者を酷使して劣悪な労働環境で働かせる企業のことをいい、明確な定義があるわけではありません。

残業時間     内 容1日当たり
残業時間
月25時間残業時間の平均1.1時間
月45時間労働基準法上、原則となる上限2.0時間
月60時間割増率が1.25倍から1.5倍になる
(中小企業は2023年4月1日以降)
2.7時間
月80時間2~6か月これを超えると
過労死の危険が大きい
3.6時間
月100時間労働基準法上、例外的に延長できる
残業時間の上限。1か月間これを超
えると過労死の危険が大きい
4.5時間
月150時間労働基準法違反6.8時間
月200時間労働基準法違反9.0時間

月100時間の残業だと、毎日22時退社になります。ここが労働基準法で認められた上限です。たとえ、残業代を100%支払っていたとしても、月100時間以上の残業は、完全にブラック企業です

35歳以降で中間管理職になると、猛烈に忙しくなりますが、新卒3年以内のヤングであれば、このあたりが限界でしょう。

ブラック企業だったら、いますぐ辞めよう


勤務している会社で、月100時間オーバーの残業があり、しかも残業代が1円も出ない会社に勤めているなら、問答無用。即、辞めましょう!

転職エージェントで「前職がブラック企業だった」と説明すれば、マイナス評価も受けません。そんなところで我慢して働く必要は、まったくありません。

月100時間以上の残業は労働基準法違反
完全なブラック企業になります。
即、転職活動を始めましょう!

残業手当はどれくらい支払われるか


そもそも、残業なんて「上司の命令」でやるものです。書面もしくは社内ネットワーク上で上司の指示を受けて行うものなのです。

残業代が100%つくのなら、社員の中には「お金がたくさん欲しい人」もいます。これを希望する人もいると思いますが、月100時間の残業代を100%支払う会社なんて、どれくらいあるのでしょうか。

私の拙い経験(肌感覚)からいうと、10%(10社に1社)くらいではないでしょうか。

「100時間の残業手当がすべて支払われる会社」は1社しか知りません。そこは大手コンピューターメーカー系列のシステム開発会社で、そこは残業手当が100%支払われていました。

ブラック企業大賞を見てみよう


「ブラック企業大賞」は、従業員に長時間労働を強いる、残業代を払わない、いじめやハラスメントがあるなど、労働環境に問題があった企業を、弁護士、大学教授、ジャーナリストなどからなる実行委員会が選出して、皮肉を込めて贈る賞。

ブラック企業大賞業界賞特別賞
2012年東京電力(株)(株)富士通ソーシアル
サイエンスラボラトリ
(株)フォーカスシステムズ
(株)ウェザ
ーニューズ
2013年ワタミフードサービスクロスカンパニー国立大学法人
東北大学
2014年(株)ヤマダ電機(株)A-1 Pictures
たかの友梨
ビューティークリニック
東京都議会
2015年(株)セブン
イレブンジャパン
該当なし暁産業(株)
2016年(株)電通ディスグランデ介護(株)
(株)プリントパック
日本郵便(株)
2017年(株)引越社
(株)引越社関東
(株)引越社関西
新潟市民病院大成建設(株)
三信建設工業(株)
2018年三菱電機(株)該当なし(株)日立製作所
(株)日立
プラントサービス
2019年三菱電機(株)該当なし(株)電通
(株)セブン
イレブンジャパン

社員を過労死させる会社

因みに、「過労死」とは、働き過ぎによる過労のために死亡することです。また「過労自殺」とは、働き過ぎや職業性ストレスの高い労働環境に起因する自殺のことです。

もちろん「過労死・過労自殺」はすべての年代で発生していますが、痛ましいのは20代の事例です。「過労死」「過労自殺」の20代に関するものを表にしました。

なぜ、20代の事例だけを取り上げたのには、理由があります。

同じ労働者でも、30歳以上になれば一人前です。様々な経験を積み、困難に遭遇した場合でも、上司や先輩に助けを求めたり、部下に仕事を割り振るなど、いくつもの対処法を知っています。だから、100%会社だけが悪いとは思いません。

しかし20代は違います。これから仕事を憶えながら、段々と経験を積んでいく、よちよち歩きのヒヨコなのです。

20代の「過労死・過労自殺」に関しては100%会社が悪い。

直属の上司はなぜ仕事を助けてやらなかったのか、先輩社員はなぜサポートしなかったのか。
(亡くなられた方のご冥福を、心よりお祈りいたします)

2004年1月奈良県立三室病院26歳臨床研修医 長時間労働
2004年3月東急ハンズ心斎橋店29歳過剰労働で、急死
2008年12月居酒屋チェーン 大庄24歳入社4か月長時間残業
2008月10月ウエザーニュース25歳過剰労働、うつ病で自殺
2008年5月宮崎県新富町職員28歳過剰労働、うつ病で自殺
2008年4月居酒屋 ワタミ26歳入社2か月、過剰労働で自殺
2010年4月東京キリンビバレッジサービス23歳半年間の激務で、自殺
2010年10月神奈川県新戸塚病院23歳過剰労働で急性心不全
2012年10月JR西日本25歳過剰労働、うつ病で自殺
2014年10月若狭町立上中中学校27歳過剰労働、うつ病で自殺
2015年12月電通24歳過剰労働、うつ病で自殺
2015年10月広島市区役所20代過剰労働、うつ病で自殺
2017年3月大成建設の下請け企業23歳過剰労働、うつ病で自殺
2019年8月三菱電機20代新入社員、パワハラで自殺

この中でも、とくに有名なのが2015年12月に起きた「高橋まつり」さんの例です。

東京大学を卒業して、大手広告会社「電通」に入社します。

だいたい電通なんて有名なブラック企業です。

しかし、その職場には激務が待っていました。毎日終電なんて当たり前、下手をするとAM3:00まで働く環境です。

たまらず部下がSOSをだすと、それを無視して叱責するパワハラ上司。

こんな環境なら誰だってもたない。もつわけがない。

でも、給料がずば抜けて高い会社って、大抵こうなんだよな。

初任給が年収1000万円といわれる外資系の投資銀行とか、戦略コンサルタントも「終電に間に合うのは久しぶり」といった、似たような労働環境だもんね。

そうした激務に耐えて、かつ結果を出した者だけが生き残っていく世界なんだよね。

かつてブラック会計事務所で働いていた


かくいう私も、かつて「ブラック会計事務所」で働いた経験があります。

地方では比較的に大きな会計事務所で、職員は25名くらい。20代の若手が多く楽しい職場環境なのですが、とにかく「ブラックな職場」でした。

給料は、現在に換算すると月15万円(最低賃金レベル)です。

残業手当なし、休日出勤手当なし、賞与なし、社会保険なし、という恐ろしい職場でした。通勤手当さえなかった。

ただ、会計事務所なんて所詮は零細企業です。たとえ他の事務所でも、似たり寄ったりの待遇だろうとは思います。

普段の月だと、月末以外は残業にはなりませんが、毎年3月の確定申告時期になると地獄が待っています。

だいたい、12月の年末調整くらいから忙しくなり、2月15日の確定申告開始から、本格的なブラックモードに突入します。

段階的に残業時間が増えていき、3月1日から15日までの2週間がピークです。

3月第1週は24時くらいまで残業、そこから25時、26時と少しづつ残業時間が長くなります。

最後の1週間はAM3:00くらいまで残業し、最終日の3月14日は徹夜。これが毎年のパターンでした。

もちろん日曜も出勤、女性だって青白い顔色で薬を飲みながら、24時くらいまでは残業していました。

これだけ働いて残業手当ゼロです。1円も出ません。完全な労働基準法違反です。

これだけヒドイ職場で、なぜ辞めなかったかというと「明確な目的があったから」です。

目的は「手に職を付けること」、目標は「企業の経理マンになること」

そのためには、簿記会計や税務がわからないとお話になりません。採用面接さえ受けられない。

だから、どんなにヒドイ職場でも3年だけ我慢して、実務を会得する必要があったのです。